さわだメモ

メモ書き

【感想】『こどものじかん』は宿命を克服する人間を描く名作


 どうもです。少し前、『こどものじかん』を読み直しました。

 昔アニメ化された頃漫画を読んでいたのですが、その時まだ完結していなかったので、中途半端なところで読み止まっていました。気が付けばとっくに完結していたので、改めて全巻読み直した次第です。

 『こどものじかん』という作品は、当時その「いかがわしさ」で有名でした。昔の私もそんな「いかがわしさ」を求めて手に取ったのだと思います。でも、改めて読み直してみると、(『To LOVEる』や『無邪気の楽園』のような物語が全く意味を持たない作品とは異なり)、物語としての完成度が高い名作だと感じました(いや、私は『To LOVEる』も『無邪気の楽園』も好きなんですが)。むしろ、エロ表現がなかった方が、もっと多くの人に読まれたのではないかとさえ思います。

 『こどものじかん』は一言で言うと「成長の物語」です。教師、生徒、保護者など様々な人間の成長が、相互に絡み合いながら展開していきます。序盤は、主人公の青木先生やヒロインの小学生りんを中心に描いていますが、中盤から後半にかけては、りんの保護者であるレイジや、青木先生の同僚である白井先生、りんの友達の美々ちゃんの成長物語の比重が高くなっていきます。

 こういった物語の重層性や、「愛」を軸にした登場人物の関係性の描き方の上手さが、この作品を名作足らしめているのですが、私が個人的に好きな理由は別にあります。僕が『こどものじかん』を好きなのは、現実の暗さや不条理を認めながら、それを克服しようとする人間の成長する姿が描かれているからです。

 子供がどのように成長するかは、親(あるいは、親代わりになる保護者)に大きく左右されます。そして、残念なことに「ひどい」親のせいで、子供が健全に成長しないことはしばしば起こることです。『こどものじかん』には、そんな親や保護者のせいで「大人になれなかった大人」が登場します。

 親や保護者による子供の成長阻害という問題は非常に重く暗いものです。親は自分で選べるわけではないですし、「親には感謝しなければいけない」という無形の社会的な圧力のようなものが存在するからです。なので、『こどものじかん』の中盤の展開はとても重苦しいです。読み進めるのがしんどいぐらいに。

 でも、『こどものじかん』の登場人物は重苦しい現実に立ち向かいます。ダメな親を肯定するわけではなく、そしてダメな親に潰されるでもなく、その親を克服して前に進もうとするのです。この作品で描かれているのは、周りの環境に翻弄される矮小な人間ではなく、自分の意思で宿命を克服する人間の力強い姿です。

 そういった点で、私にとって最も印象的なのは、主人公であるりんの友達の美々ちゃんです。物語の後半、小学6年生になった美々ちゃんは、母親によって将来の道を閉ざされそうになるのですが、それを無力な子供なりの方法で打ち破り、道を切り開いていきます。物語の序盤、美々ちゃんはおどおどとした大人しい女の子として描かれているため、その成長ぶりとひたむきな姿に心を奪われるのです。

 最後になりますが、『こどものじかん』はギャグもいいですね。ところどころに挟まれるギャグのおかげで、物語の重さが和らいでいます。特に宝院先生やりんの友達の黒ちゃんは、ギャグ要因としていい味をだしています。

 そんなわけで、見た目に騙されず(?)、ぜひとも多くの人に読んで欲しい漫画です。

 なお、以上の感想は個人的なものであり、作品のメインテーマからはズレているうえ、読了してから時間が経っているので、事実に誤りがあるかもしれないことをご了承ください。


ではでは